交通事故による腰椎捻挫のリハビリの内容は?お金の請求についても解説
最終更新日 2023/3/2
接骨院がくグループ代表
柔道整復師 山田 学 監修
交通事故の際に起こりやすいケガのひとつである腰椎捻挫。主な症状は腰痛ですが、状態によっては長引いて生活に支障が出ることもあり、診察を受けてリハビリを受けることが大切です。
この記事では、腰椎捻挫のリハビリの内容や、交通事故の際に請求できるお金について解説します。
交通事故による腰椎捻挫のリハビリの内容は?お金の請求についても解説 もくじ
・腰椎捻挫とは?
・腰椎捻挫の治療法
・腰椎捻挫に対するリハビリテーションの内容は?
・交通事故により腰椎捻挫になった場合に請求できるお金は?
・まとめ
腰椎捻挫とは?
腰椎捻挫は、ぎっくり腰や急性腰痛症とも呼ばれ、重い物を持ち上げるなど、腰に負荷がかかることで起こるケガとして知られています。
自動車乗車中に追突されるなど、交通事故がきっかけで受傷することもあります。
急に体幹が曲がったり捻ったりしてしまうことで、腰の骨(腰椎)に衝撃が加わり、腰椎の骨の間にある椎間板、その周囲の靭帯・筋肉などが損傷を受けて痛みが生じます。
主な症状は腰の痛みで、受傷直後から強い痛みが生じることが多いですが、時間が経ってから痛みが生じることもあります。
腰椎捻挫の治療法
医療機関を受診して腰椎捻挫と診断された場合には、以下のような治療を行います。
・薬物療法
腰痛や炎症に対しては、消炎鎮痛剤や筋弛緩薬を内服したり、湿布や塗り薬を用いたりして痛みの緩和を図ります。
内服薬や外用薬でも痛みが改善しない場合には、脊髄と骨の間に局所麻酔薬を注射するブロック注射を行うこともあります。
・安静
受傷直後は腰に負担をかけないように、安静にすることが大切です。ただし、長期間身体を動かさずにいると筋力が低下したり、関節の動きが悪くなったりして痛みが悪化することもあります。安静期間は数日~1週間程度とし、リハビリを開始するのが効果的であるという報告もあります。
・装具療法
腰椎の動きを制限してより安静を保つために、コルセットを装着することもあります。プラスチック製の硬性装具や布製の軟性装具などがあり、症状が強く固定性を高めるためにはより硬い装具を用います。
腰椎捻挫に対するリハビリテーションの内容は?
受傷から間もない頃は安静が重要ですが、痛みが落ち着いてきたらリハビリテーションを行います。リハビリは専門家の指示・処方の下で行います。
腰椎捻挫に対して行われる、リハビリの主な内容を紹介します。
・徒手療法
徒手療法とは、セラピストが患部に触れて筋肉や関節の状態をみながら、筋肉の緊張を取り除いたり、関節の動きを円滑にしたりすることを指します。筋肉の緊張により生じた痛みには、特に即時効果が得られやすいと言われています。
・物理療法
患部を温めたり電気や超音波を流したり、牽引したりといった物理的エネルギーを加えて痛みの緩和を図るのが物理療法です。
患部を直接温めることや、超音波の温熱作用により筋肉の緊張を和らげる効果が期待できます。電気刺激では、筋肉の緊張をほぐすだけでなく、痛みの伝達をブロックする効果も得られます。
牽引とは、専用の機器を用いて腰を下方向に引っ張ることで、神経の圧迫を軽減したり、筋肉などの組織を伸ばしたりして痛みの軽減を図る方法です。
・運動療法
運動療法の内容は幅広く、安静期間中に低下した筋力を取り戻すトレーニングや、ストレッチなどを行います。
腹筋、特にインナーマッスルと言われる深い層にある筋肉はコルセットの役割をするため、鍛えることで腰痛の緩和に効果的です。
長期間安静にしていたり、コルセットを装着していたりすると、筋肉や関節が硬くなって動かしにくくなります。日常生活の動作に影響が出ることもあるので、少しずつ動かしたりストレッチをしたりしていきます。また、太ももの裏の筋肉が硬くなると腰に負担がかかり、腰痛を引き起こしやすいので、股関節や脚のストレッチも重要です。腰痛の緩和に効果的な体操として、ウィリアムス体操というものがあります。ウィリアムス体操では、背中や腰・脚のストレッチを行うことで腰にかかる負荷の軽減を図ります。
リハビリでは、筋力や柔軟性を高めるとともに、腰に負担のかかりにくい動作を身に着けることも大切です。一度腰椎のケガをしてしまうと、重い物を持ったときや急な運動などで症状が再発してしまうことがあります。重い物を持ち上げるときや、仕事に必要な動作において腰に負担のかからない方法や、日常での姿勢や注意点についての指導も受けます。
・装具療法
安静期間が終わりリハビリを開始してからも、状態によってはコルセットの装着が必要となります。受傷直後は硬いプラスチック製のコルセットを装着していても、リハビリや日常生活用に布製の柔らかいコルセットに変更して装着を続けることもあります。身体を動かす仕事や日常生活での活動量が多い場合には、腰椎捻挫の悪化の予防のために長期間の装着が必要となることもあります。コルセットは、医師の指示に従って装着しましょう。
交通事故により腰椎捻挫になった場合に請求できるお金は?
交通事故の被害者となり腰椎捻挫を受傷した場合、入院・通院の治療費や交通費とは別に、慰謝料を加害者に請求できます。請求できるお金には、大きく分けて入通院慰謝料と後遺障害慰謝料があります。
・入通院慰謝料とは?
入通院慰謝料とは傷害慰謝料とも呼ばれ、交通事故で病院にかかった場合にはほぼ受け取れると言える慰謝料です。
一般的に、慰謝料は入通院の日数によって決まりますが、以下で示したように、それぞれの基準によって支払われる金額は異なります。
支払われる金額は一般的に、自賠責基準<任意保険基準<弁護士基準となります。
自賠責基準
自動車損害賠償保障法で定められた基準です。
以下の2通りの計算式で求められます。
(1)入院日数×4,200円 + 通院期間(実治療日数×2)×4,200円
(2)入院日数×4,200円 + 通院期間×4,200円
(1)または(2)のうち、通院期間が短いほうで計算します。
任意保険基準
各保険会社が独自に定めた基準です。
以前公開されていた統一基準では、入院した月数と通院した月数をもとにして求められます。以前の統一基準では、例えば1ヶ月入院して1ヶ月通院した場合には、37万8,000円が慰謝料として支払われる計算となります。
任意保険基準も、以前の統一基準と大きく掛け離れることは少ないといわれています。
弁護士基準
「裁判所基準」ともいい、示談交渉や裁判で用いられる基準です。
例えば、1ヶ月入院して1ヶ月通院した場合には、52万円が慰謝料として支払われます。
・後遺障害慰謝料とは?
入通院慰謝料は1日でも通院すれば請求できる慰謝料です。後遺障害慰謝料は、事故によるケガの障害が残り、後遺障害認定を受けないと請求できません。
後遺障害認定は、状態や程度によって14段階の等級に分けられ、1級に近いほど請求できる後遺障害慰謝料は高額になります。腰椎捻挫の場合には、14級または12級が認定されます。
入通院慰謝料と同様、後遺障害慰謝料も自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の3つの基準で受け取れる金額が決まります。
例えば14級の場合、自賠責基準では32万円、任意保険基準では40万円、弁護士基準では110万円が支払われます。
まとめ
腰椎捻挫のリハビリの内容や、交通事故で受傷した場合に受け取れる慰謝料について解説しました。
リハビリを行うことで完全に回復するという保証はないですが、症状を軽減したり、再発のリスクを軽減したりする効果が見込めます。1日の通院でも慰謝料が請求できるので、早急に治療を開始するためにも、事故に遭った際には早めに医療機関を受診しましょう。
参考文献
・腰椎捻挫の症状とは?後遺障害等級についても解説 | 交通事故病院
https://clinic.jiko24.jp/jiko-info/lawyer/youtsuinenza_syouzyo/
・交通事故で腰痛になった際の慰謝料相場・後遺障害等級認定のポイント|交通事故弁護士ナビ
https://jico-pro.com/columns/380/
・交通事故で腰椎捻挫!慰謝料・後遺障害認定はどうなる? | リーガライフラボ
https://www.adire.jp/lega-life-lab/traffic-accident-lumbar-sprain611/#lwptoc5
・松野丈夫、中村利孝、他:標準整形外科学、P572、2014
・菅俊光:腰椎疾患に対するリハビリテーション、2017
https://www.jstage.jst.go.jp/article/spinalsurg/31/1/31_12/_article/-char/ja/
・淡路静佳、佐藤香織、他:腰痛症患者に対する腰部への徒手療法と腰痛体操の持続効果の比較、2004
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/2003/0/2003_0_C0738/_article/-char/ja/